「究極の伝動」をかなえ、7%という高い省エネ効果を実現したHFD System。発売から10年を迎え、さまざまな分野への導入が進むなか、開発者たちでさえ当初予想しなかった、さまざまなメリットが明らかになってきました。
前編に続き、インタビューを行ったのは、こちらの2人です。
事故・労働災害防止、労働人口問題、騒音、気圧の安定化
お客様から気づかされた、さまざまなニーズ
HFD systemが登場しておよそ10年、お客様からはどのような評価をいただいていますか?
吉見:HFDsystemは省エネ性能だけが注目されがちですが、お客様によってさまざまなアプリケーションに対応できる可能性を持っているところが、大きな特色だと感じています。
私はカスタマーサポートを担う技術者としてお客様のもとにお伺いする機会も多いのですが、私たちが想像しなかったようなニーズやメリットに気づかされることが度々あるんです。
たとえば、お客様に喜んでいただいているHFD Systemの特徴を挙げるとしたら、どんな点ですか?
宮田:Vベルトの約3倍の長寿命化を実現したHFD Systemは、メンテナンスフリーで、安全面からも評価をいただいています。Vベルトの多くは、交換のとき、弾性の伸びを使って無理入れ・無理抜きをしていました。反動で入れるので、反動と一緒に手が持っていかれて骨折などにつながってしまう。年間数件、こうした事例が起こってしまっていた。
吉見:HFD Systemは、ここにスパナを引っかけるところがありまして、スパナでバネをキュッと外すと、もうベルトが外れてしまうのですね。送風機は、高所での交換作業になる場合も多い、HFD Systemならスパナ一つでいいし、高所に上がる回数自体も減らすことができます。
吉見:交換時も、安全性が非常に高いのです。これまでに労災などを経験されている企業様からは、それを理由に導入いただくケースもあります。また、労働人口問題ということもあります。
工場に伺っても今はメンテナンスマンが非常に少ない状況なのですね。メンテナンスを減らせるのであれば採用したい。そんなお声をいただくことも最近数多くあります。
宮田:「音」の問題もありますね。
Vベルトは緩んでくると起動時に大きな音をたてます。たとえばホテルなどで、こうした音が問題になる。工場でも、近隣住民からの苦情につながるケースがあります。夕方以降、装置を動かさないでほしいと。
HFD Systemは、こうした音の問題の解消にも一役買っています。今後、音楽スタジオやテレビ局といったシビアな静音性を求められる建物や装置へも展開されることを期待しています。
吉見:食品工場などでも、気圧を一定にするために回転数を一定に制御しなければならない。常にシビアなコントロールが求められる場合があります。平ベルトだと、その調整もしやすいのです。
Vベルト5本分の働きを、平ベルト1本でカバー
だから、同期伝動に近い動きが実現、おまけに産業廃棄物も1/50に
宮田:つまり平ベルトは、設計どおりの回転数がピタッと出るんです。これは摩擦伝動では珍しいことです。張力と伝動がほぼ比例する関係にあるので、コントロールが効くのですね。 一方、Vベルトは張力が一定を超えると、座屈変形を生じて、伝動能力が下がってしまいます。
だから平ベルトは、1本で求める領域に達することができる。Vベルトの場合は、ベルトの本数を増やすことでそれをカバーしていた。実際に、Vベルトを5本使用していた装置を平ベルト1本に置き換えた事例もあります。本数が1/5で、寿命が3倍以上ですから、産業廃棄物もおよそ1/50に減らせることになります。
宮田:はじめは皆さん「これで大丈夫なのか」と不安がられます。しかし半年から1年経って、能力的にも寿命の面でも問題ないことが分かると、「全部これに替えてほしい」と言ってこられます(笑)。
お客様の「困りごと」をHFD systemで解決
専用開発で新しいニーズにも対応していく
宮田:お客様のもとでお話を聞いているなかで、ベルトの耐久性を特に求められたのは、多くの工場で排水処理に活用されている「曝気ブロア」でした。貯水槽の水位によってポンプへの負荷が変動し、ベルトにも大きな負担がかかる。
さらに24時間運転をしている装置がほとんどで2〜3ヶ月でベルトの交換が必要という話も多く聞かれました。当時は高負荷タイプのHFDが無い時代でしたので、お客様の強い要望により高負荷タイプの開発に拍車がかかりました。
吉見:伝動効率の工場とメンテナンス頻度の低減に大きく貢献できるため、採用していただくお客様は後を絶たないという状況にあります。
吉見:また、クーリングタワー専用仕様のHFD Systemも開発しました。建物の冷房に使われるクーリングタワーですが、通常建物の高いところに設置されます。
ある現場確認でお客様の設備を確認しにいくと、50階建ビルの屋上に設置されたクーリングタワーによじ登らなければなりませんでした。高所恐怖症ではない自分でも急所が縮み上がる思いで作業をした経験があります。
宮田:クーリングタワーのベルトは重力に対して90°横を向いたかたちで取り付けられます。重力に反してベルトをまっすぐに走行させるのはHFD Systemならではの領域となります。
さらに、クーリングタワーの上は高湿条件のもとで稼働しなければならないため、「防錆仕様」というものを開発しました。防錆仕様はクーリングタワーのみならず、塩害の影響を受けやすい臨海地域のお客様にもご提案できる仕様になりました。
最後に、長く開発や技術サービスに携わってきた二人から、今後のHFD systemへの期待をお願いします。
宮田:HFD Systemは平均で約7%の省エネ効果を実現しており、個々のお客様の満足は獲得しているのですが、全国の同様の設備にすべて搭載されると発電所1つ分の節電効果を実現することができます。
そのためにはもっともっと全国のお客様に知っていただくことが重要ですし、当社としても大勢のお客様の要求にお応えできる体制づくりが必要と考えています。
吉見:今後も全国のお客様の声を聞かせていただきながら、HFD Systemの製品開発を進め、できれば世の中の伝動ベルトをHFDに置き換えていきたい、そんな意気込みで進めていきたいと考えています。
まだまだ大きな可能性を秘めたHFD System。お客様の抱えるさまざまな課題を解決しながら、
さらなる進化を遂げようとしています。これからの展開に、ぜひご期待ください!